人工知能(AI)には、研究者の間で一致した定義がありません。公的な資料で説明されるときも、「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」という、かなり大まかな言い方にとどまります。
定義を一つ覚えれば済む言葉ではありません。G検定の学習は、この「人工知能」という言葉そのものから始まります。
この記事で扱うのは、次の5つです。
- 定義:研究者によって説明が違い、確立した定義はない
- 機械学習・ディープラーニングとの関係:人工知能の中に機械学習があり、機械学習の中にディープラーニングがある
- ロボットとの違い:人工知能が扱うのは「考える」部分で、形をとっているかどうかは関係ない
- エージェント:AIと呼ばれる製品は、周りの状況を入力として受け取り、それに応じて行動(出力)を決めるエージェントとして捉えられる
- AI効果:当たり前になった技術は、AIと呼ばれなくなっていく
人工知能に、決まった定義はない

公的な資料でも、冒頭に挙げた「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」のような、大まかな説明にとどまります。何をもって知的とするのかまでは、この説明では決まりません。
ではなぜ、ここまで大まかなままなのか。背景として指摘されているのは、そもそも知性とは何か、知能とは何か、それ自体が定義されていないことです。もとになる言葉が決まっていないので、人工知能の定義も一つに決まりません。
人工知能・機械学習・ディープラーニングの違い

機械学習とディープラーニングは、AIと同じものを言い換えているように使われることもありますが、指している広さが違います。
- 人工知能:3つのうちで一番広い言葉
- 機械学習:人工知能を実現するための手法の一つ
- ディープラーニング:機械学習の手法の一つ。たくさんの層を重ねたニューラルネットワークを使うものを指す
ポイント
人工知能の中に機械学習があり、機械学習の中にディープラーニングがある。3つは入れ子の関係です。
AIって、機械学習のことじゃないの?
機械学習は、AIを実現する方法の一つです。AIと呼ばれるものが、すべて機械学習を使っているわけではありません。
機械学習を使っていれば必ずディープラーニング、というわけでもないのね。
人工知能とロボットは、何が違うのか

人工知能と聞いて人型のロボットを思い浮かべる人は多いと思いますが、人工知能が扱っているのは、考えるという目に見えない働きのほうです。ロボットのような形をとっている必要はありません。
実際、ふだん使っている検索エンジンや、スマートフォンの音声アシスタントのように、形を持たないサービスにもAIは組み込まれています。
では逆に、AIを積んだ人型ロボットはどうでしょうか。このときAIに当たるのは、状況を判断して次の動きを決める、考える部分です。腕や脚を動かす機構、カメラやセンサといった体のほうは、ロボットの技術です。一台の機械の中に、AIの部分とそうでない部分が同居しています。
AIと呼ばれる製品は、エージェントとして見る

人工知能という言葉の定義から説明を始めるのが難しいなら、実際にAIと呼ばれている製品やサービスを、エージェントとして見ることができます。
定義
エージェントとは、周りの状況を入力として受け取り、それに応じて行動、つまり出力を決めるものです。周りの状況(入力)が変われば、それに合わせて返す答え(出力)も変わります。
AIを製品やプログラムとして指すときは、言葉の意味を先に決めて当てはめるのではなく、何を受け取って何を返しているかで見る。定義が一つに決まらなくても、これならAIを具体的に指せます。
当たり前になると、AIと呼ばれなくなる(AI効果)

今はAIと呼ばれている技術でも、時間が経つとAIとは呼ばれなくなることがあります。
たとえば、チェスや将棋のプログラムです。コンピュータが人間の強い棋士に勝てるようになるまでは、人工知能の代表的な挑戦として扱われていました。ところが実際に勝てるようになり、その仕組みが知られてくると、チェスや将棋のプログラムは決められたやり方で先を読んでいるだけで、知能とは呼べない、と言われるようになります。
印刷された文字を読み取る技術も似ています。かつては人工知能の課題とされていましたが、今ではスキャナやアプリに付いている当たり前の機能で、これをAIと呼ぶ人はあまりいません。
このように、実現されて原理が分かってしまった技術は、それは知能ではないと見なされて、AIとは呼ばれなくなっていきます。この現象をAI効果と呼びます。
注意ポイント
技術そのものが変わったわけではありません。変わったのは、人の受け取り方のほうです。だから何をAIと呼ぶかは、時代とともに移り変わります。
まとめ

人工知能は、研究者の間でも定義が一つに決まっていない言葉です。公的な資料でも「知的なコンピュータプログラムを作る技術」といった大まかな説明にとどまり、原理が分かって当たり前になった技術はAIと呼ばれなくなります(AI効果)。
そこで、入力を受け取って出力を返すエージェントとして見ること、人工知能の中に機械学習があり、その中にディープラーニングがあるという入れ子、考える部分がAIで身体の形は問わないこと。この3つが、何をAIと呼んでいるかを見極める手がかりになります。
次は、その入出力の仕組みを人がどこまで作っているかを軸に、AIを4つのレベルに分ける考え方を取り上げます。